【調理室池田】「なすとじゃがいものマスタードグラタン」の作り方【簡単ホワイトソースのコツ】

グラタンという料理は、フランスはドフィネの郷土料理。もっとも日本で市民権を得たフランス料理のひとつといってもいいでしょう。もともとはじゃがいもを牛乳と生クリームで煮たものを耐熱皿に移し、たっぷりのチーズをふって焼くという料理です。
グラタンというとベシャメルソースを作らなければならないイメージがありますが、じゃがいものでんぷんで充分とろみがつくというもので、郷土料理らしくなかなか合理的なレシピとなっています。
シンプルなじゃがいも料理でももちろんおいしいのですが、今回はもう少しボリュームを出してメインのおかず風に。もちろんワインやビールにも◎です。

幼いころ、めったに行けることのなかった西洋風のレストランに連れていってもらったときは、必ずといっていいほどグラタンかピザを注文していたように思います。そんなことを今夏のパリで注文したクロックムッシュを見て思い出し、帰ったら近いうちにグラタンを焼こうと決めていました。
point

今回じゃがいものほかに加えたのは、なすとひき肉とゆで卵。冷蔵庫にありそうなものを選びました。
そして味が単調にならないように、粒マスタードを具と具の間にはさむようにしのばせています。それからにんにくも少し多めのほうがおいしいですよ。ものたりないと思ったらにんにくです。

撮影は9月の末。おいしそうな大型のなす(愛媛の絹かわなす)が買えたのでそちらを使いましたが、何でもかまいません。じゃがいもは冷蔵庫にしまい込まれていた、きたあかりを使いました。

ひき肉は豚ひき肉ですが、粗びきを使用しました。口に入れたときに肉感が楽しめるのでおすすめ。手に入るようなときはぜひ使ってみてください。

生クリームは少しだけいいものを。こくや風味に加え、とろみのつきぐあいが変わってくるので、乳脂肪分が高めのものをおすすめします。
レシピは次のページです。季節は秋、あつあつをどうぞ。
–{マスタードグラタンの作り方}–
なすとじゃがいものマスタードグラタンレシピ
材料(直径20cmの耐熱の器1つ分・2~3人分)
豚ひき肉(粗びき)……100g
なす……2個
じゃがいも……2個(200g)
玉ねぎ……1/4個
ゆで卵(8分ゆでたもの)……2個
にんにく……1かけ
粒マスタード……大さじ2
小麦粉……大さじ1/2
生クリーム……1カップ
とろけるチーズ、オリーブオイル……各適宜
塩、こしょう、ナツメッグ……各少々
作り方
〈具の準備をする〉
(1)なすはへたを切って、幅1cmのいちょう切りにする。フライパンにオリーブオイル大さじ3を中火で熱し、なすを入れてこんがりするまで両面を焼く。バットなどに取り出し、フライパンをさっと拭く。

(2)フライパンに湯を沸かす。じゃがいもはよく洗い、芽があれば取り除いて幅3~5㎜に切る。湯に入れて、竹串がすっと通るまでゆでる。

〈ソースを作る〉
(3)にんにくは粗いみじん切りにする。玉ねぎは繊維を断つように薄切りにする。
(4)(2)のフライパンをさっと洗い、オリーブオイル大さじ1を中火で熱し、ひき肉を炒める。肉からしっかり脂が出たら、にんにく、玉ねぎ、塩を加える。
(5)玉ねぎがしんなりとしたら、小麦粉をふり入れてなじませる。生クリームを3回に分けて加えてそのつど混ぜ、かるくとろみがつくまで煮つめる。ソースが煮つまりすぎたときや、器の容量によってソースがたりないようなときは牛乳適宜(分量外)で少しのばしてもいい。

〈オーブンで焼いて仕上げる〉
(6)オーブンを200℃に予熱する。耐熱の器に薄くオリーブオイルを塗り、にんにく1/2かけ(分量外)の断面をこすりつける。卵は殻をむいて大まかに切る。
(7)なす、じゃがいもの各1/2量を順に広げ入れ、粒マスタード大さじ1をざっと塗る。残りも同様に繰り返し、ゆで卵を広げ入れる。

(8)(5)のソースを加え、チーズをたっぷりとのせる。こしょう、ナツメッグをふり、200℃のオーブンでこんがりとするまで15~20分焼く。

マスタードの酸味と辛みをきかせた、お酒にも合う大人向けのグラタン。ぜひ楽しんでください。
次回は11/1(金)公開です。
撮影よもやま話

フランスを代表する文化的自由人、ピエール・バルー。皆さんご存じの映画「男と女」で有名なあのかたです(主演し主題歌を書いた)。ヨーロッパ最古のインディーレーベル「サラヴァ」を立ち上げ、自身の作品はもちろんブリジット・フォンテーヌなどの作品をリリースしていて、それらの素晴らしい歌は調理室でも好んで流します。
さて、なぜここでバルーを紹介するかというと、彼の考え方や生き方に強く共感を覚えるからです。名声を得ながらも独自の考えを貫き、ゆえにメジャーになりきらずに長く愛されつづけることをめざすというスロービジネスの視点です。そこから生まれた利益は新たなアーティストの発掘や作品を制作することに費やされ、それを繰り返すことで素晴らしい作品が生まれ、素晴らしい作品は後世に残る。個人の富や資産なんてものを超えて社会的な文化につなげていくという、今でこそ注目されているサステナブルな経済循環を素のままで体現してきた人なのです。あぁ、文化的自由人なんて言われてみたい。本日の撮影BGMでもありました。(文/池田講平)

2018年12月に川崎市にある中央卸売市場北部市場内に開店。アンティークショップ・アートギャラリーを兼ねた、市場には珍しいスタイルのカフェ。早朝から働く人がコーヒーを片手に手軽に食べられるようにと作った焼き菓子や、ツナメルト、フリットといった市場で仕入れる新鮮な魚介類を使ったランチが人気。
公式HP 公式インスタグラム
神奈川県川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟 45
営業日/月・火・木・金・土曜
営業時間/7:00~13:30
(ラストオーダーは13:00、土曜日のみ14:00)
ランチタイムは 11:45~ 休みは市場に準ずる(原則、水・日曜と祝日)
※一般のかたの市場への入場は8時から。来店の際は必ず上記HPかインスタグラムを確認してください。

料理・文/池田宏実 撮影・スタイリング/池田講平 編集/小林