
料理の腕はいつか出会うまだ見ぬ彼女のために【ゲスの極み乙女・休日課長インタビュー】

「その時々の思いつきが積み重なって今日の一皿になっていく。それが自炊の醍醐味の一つ。課長のナポリタン、過去最高傑作です。いつかあなたに食べてもらう日が来ることを願って」
「未来の彼女に向けて、キーマカレー作りました。あなたの分、まだとってあるので連絡ください」
ライブの案内や新曲配信のお知らせのツイートと並ぶ、そんな妄想の彼女へ向けたメッセージ。ツイート主は「ゲスの極み乙女」「DADARAY」「ichikoro」「礼賛」の4つのバンドのベーシストとして活動する休日課長さん(以下:課長さん)です。
未来の彼女様、朝ごはん作って待ってます。永遠に。 pic.twitter.com/kARG8pPptt
— 休日課長 (@eninaranaiotoko) May 6, 2022
まだ見ぬ彼女への言葉から伝わるのは、料理することも食べることも大好きだということ。ドラマ化もされた自身のレシピ本『ホメられるとまた作りたくなる!妄想ごはん』(マガジンハウス)も出版しています。さらにわかったのは、小社発売の『The基本200これだったんだ!おかずのコツ。』(以下『The基本200』)が何と10年来の愛読書ということ!
そこで3/22(水)からスタートする新連載「休日課長の『The基本200』を極める」。
その意気込みをきくべく、撮影現場にてインタビュー。止まることを知らないおいしいもの談議の前後編、とくとご賞味ください。
4月の連載2回目に登場予定の「五目炒飯」から。課長の華麗なるフライパンさばきにも注目!
生粋の食いしんぼうが作った気まずいクッキーと下心で始めたカレー作り
――今日の撮影の様子を拝見していて、本当にお料理がお好きなんだと伝わってきました。子どものころからお料理をされていたんですか?
初めて作ったのは、クッキーでした。おかずじゃなくて、お菓子だったんです(笑)。
小学3年生のとき、バレンタインのお返しとして父親といっしょに作って。でも、そのクッキーをあげた女の子に泣かれてしまって……。
うれし泣きじゃなく、まさかの「自分があげたものより、おしゃれでおいしい」っていう悔し泣きだったんです。
というのも、うちの父は、けっこうな料理好きで。作ったのは、レモンフレーバーとカカオのクッキーという、かなりのクオリティのものだったがために、気まずいクッキーになってしまって(笑)。
――お父さま、すごいですね。では、お料理はお父様から教わったんですか?
それが、ちょこっと手伝いはしていましたが、きちんと教わったことはなくて。いつも食べる専門でした。
家族が集まって、僕の子どものころの話をするときに出てくるネタが、ビッグマック。幼稚園のころに食べたいと言ったらしく、祖父が「全部一人で食べられないだろう」と怒ったらしいんです。でも、「絶対に食べられる」と意地を張った、と。「おまえは小さいころから食い意地が張ってたんだ」って言われます。
――幼稚園児にあのサイズはなかなかですもんね。お父さまの思い出の味として、どんなものがありますか?
いろいろ作ってくれていたので悩みますね。部活の朝練のお弁当も作ってくれてたくらいなんですよ。
うーん、オムライスですかね。卓球部に入って運動していたころはすごくおなかがすいていて、わんこそばのように次々とオムライスを食べていました。わんこオムライス(笑)。僕が食べ終わるのを見計らって、次の皿には卵に包まれたチキンライスがあるんです。最高で7皿食べたことがありますね。
空の皿を出すと、すかさずスッと次の皿が差し出される。名付けて「わんこオムライス」。
あとは、ツナピラフ。これは母の料理だったかもしれないな……。ツナピラフは、ツナ缶と米を炊飯器に入れて炊き込むだけなんですけど、うまいんですよねぇ。
幼いころはアトピー性皮膚炎があったので、母がすごく気をつかって料理をしてくれていて。それが治ってからは母よりも父が作ることが増えていったんですが、ツナピラフはよく母に作ってもらっていた気がします。
自炊のきっかけは下宿先の四畳半で作り始めたカレー
――わんこオムライス……それを作れるお父さまもすごいですし、7皿もすごいです。実際にご自分で料理をされるようになったのはいつごろからですか?
大学3年生のころです。一人暮らしを始めたのが、風呂なしトイレ共同のアパートで、部屋の広さは4.5畳。
何をどう考えたのかわからないんですけど、どうしても友人をよんでホームパーティをやりたいと思って。女子に来てもらいたいっていう下心もありました(笑)。
で、狭いキッチンでもできる料理で、かつ、人にふるまえる一品は何だろうと考えて、カレーを作りはじめたのが自炊のきっかけだったと思います。「和田の作るカレー、うまいらしいぜ」って評判になったらいいな、と。
–{「モテたい」がきっかけで始めたカレー作り}–
しじみだしでとったスープによるうまみ満点の自作カレー。冷凍しておき、朝食に食べることも。インスタグラムより
――すごい、当初のねらいどおりですね。
それが、彼女ができるまでには至らずなので、本当のねらいははずれてるんですよ。今もはずれつづけています(笑)
――今後に期待しましょう(笑)。カレーは、お店に食べに行くのもお好きですよね? それも当時からですか?
そうです。いろいろなお店を食べ歩いて、研究していました。大好きな店が何軒かあって、その味に近づけたいな、と。
東小金井駅にある「サイのツノ」というお店のカレーが大好きなんです。カレーは4種類しかない店で、それが全部、抜群にうまい! シンプルで深みがすごくてやばい! 何が入っているかわからないような、具材が溶け込んでるタイプのカレーが好きです。
リスペクトする東京・東小金井「サイのツノ」のカレー。まろやかグリーンのハーフに彩り野菜トッピングバージョン。インスタグラムより
――ご自身の著書(『妄想ごはん』)でも、ご紹介されているお店ですよね。すごくおもしろそうなお店です。ほかにおすすめはありますか?
大阪の「カルダモン.」のカツカレーも好きです。カツカレーって後半になるにつれて、飽きてきませんか? 雰囲気ものというか、勢いで頼んじゃって、最初はすごくおいしくてうれしいんだけど、だんだんころももブヨブヨになってきて重く感じてしまう。
でも、カルダモン.のカツカレーは違うんです。その後にラーメン食べられるくらい軽い。実際、食べに行きますし、この前はとり天うどんも食べに行ったくらいです。
――カツカレーの後にとり天うどん……さすがですね。
カツカレーなのに軽いんですよ。まずころもがサクッじゃなくて、カリカリ。カレーがかかっても最後までカリッと感があるんです。お肉もきちんと処理されていて油がキツくないし、カレーとの相性も抜群で。ご飯、カレー、カツの三位一体感がすごいんですよ。
あとは、京都の「Bar K6」や、東京の西永福の「スペキエ」も好きですし、王道の渋谷の「ムルギー」もよく行きます。
大阪を訪れると立ち寄る名店「カルダモン.」のカツカレー。噛めば噛むほど広がる風味が、たまらないそう! インスタグラムより
――おすすめが次々に出てきて、さすがです。カレーから始まったという自炊ですが、カレー以外のお料理は、どんなものを作られていましたか?
そこは雑でしたね。雑なチャーハンとか、雑なしょうが焼きとか。しょうが焼きというよりも肉炒めみたいな。ネットでざっと見たレシピをもとにしていたり、直感で作っていたり。
そんなことを繰り返していたので、きちんと基本を身につけたいと手にしたのが、この本(『The基本200』)というわけです。
〈PROFILE〉
休日課長
1987年生まれ、埼玉県出身。「ゲスの極み乙女」「DADARAY」「ichikoro」「礼賛」の4バンドのベーシストとして活躍。音楽活動の合間にTwitterやInstagramに日々の自炊写真をアップしている。妄想の彼女へ向けてのメッセージがおもしろいと評判に。2020年に著書『ホメられるとまた作りたくなる!妄想ごはん』(マガジンハウス)を出版、21年に同書が原案本としてドラマ化された。
休日課長の自炊のバイブル
『The 基本200~これだったんだ!おかずのコツ。』
2008年に発売されて以来、38刷、累計275,500部を超える大ベストセラー。おにぎりやみそ汁などの基本から、ハンバーグ、から揚げ、炒飯などの和洋中の定番人気メニュー、旬の味や副菜まで、たっぷり200品掲載!

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撮影/伊藤徹也 文/晴山香織